2014年6月25日水曜日

「東北ずん子」のキャラクター活用について考える。その2

さて、前回の続きの話です。

白石市でやった、実例の案内のセミナー第2回からの考察です。

今回は2回めなので、前回より深い考察や、紹介されなかった実例を知ることが出来るだろうと、期待を持って臨みました。


そして、実は仙台から移動する際、時間がギリギリだったため新幹線を利用しましたが乗ろうとした列車が臨時列車で運行せず、少し遅れて参加となってしまいました、残念。開始から15分くらいだったので、何方かお歴々のご挨拶を賜る時間に居れなかっただけで、他は拝聴できたと考えています。

今回のスピーカーは前回と同様のお二方に加え、東京・阿佐ヶ谷にオープンし阿佐ヶ谷アニメストリートのずん子ショップ「OUTPUT」店長の片谷国康氏をお招きしての開催です(ずん子だけの商売をされているわけではありません)。

色々と話はありましたが、かいつまんで説明すると、
  • 前回と同じお二人からの話は、ほぼ、前回と同じ
  •  阿佐ヶ谷で商品を置いている
  • 白石市内での開発による商品は少しだけ増えている
という話でした。
つまり、いま一つずん子の商品開発の話は同じであり、あとは販売企業の話となるとコンテンツそのものの話が乏しいだけでした、商品を卸して下さい、という事だと理解していますが、集客力や実績のデータは明確には提示されませんでした。
そんな感じで、話が記憶に残っていません。「記録を取れよ」というご指摘も重々、承知しておりますが、自分の尺度で必要なことはメモしておりました。それでこの結果ですので、ご承知おき下さい。そして、最後に質問コーナーとか在るといいと思っていました。が、残念ながら在りませんでした、その後、懇親会があるので宜しく、とのお達しを承り、終わりました。ビジネス展開に興味の在る店主さんは、これまでの展開されている企業に聞いて下さい」、で終わっていました。


結論から言いますと、これに尽きます。

版権コストが無いので効果を精査していない

ということです。商工会に参加されている企業のお歴々は、ずん子のコンテンツそのものには興味がなく、ビジネスとして捉えてられているとして、このキャラクターはコストが低いので利益を上げやすい、という観点が強いとも見て取れませんでした。他県等の団体からの視察があるということに反応されている参加者もいましたが、それがビジネスの成功には繋がっていません。
ずん子の痛バスは走っていますが、これで利益が上がるのは、ラッピングの制作を市役所から受託した企業の他、どこになるのでしょうか。ちなみに私も市民ですが、地元ですら全く話題になっていません。白石市・商工会の取り組みがどこかで取り上げられたとしても、直ぐに「第二の『ずん子の里』」は、容易に構築できます。

恐らく、こうした地場産業の振るわない過疎傾向の地方都市では、「ずん子でスポットライトを当てられる街にしたい」ということが目的になっていると思います。そこでキャラクターを推すことで目立ったとしても、その先の展開は難しくなります。キャラクターだけ目立つと、その地元の空疎感を強めます。

そうした中で今回で唯一、成果を上げて欲しいと思ったのは、こちらの商品です。一回目のセミナーで、社長さんに推したアイデアです。



下の画像はAmazonへのリンクになっています。
お求めになりたい方は、上記の製造企業か、何れかでお買い求め頂けます。
>
Amazonで売っているのは流石だと思います。

ちょっと惜しいのは上手く出来過ぎているので、ファン向けというよりも、「可愛いパッケージだから買ってみよう」というひとが購入するだろう、というところです。簡単に言うと、温麺を買いたい人の母数から大きくはみ出さない、というところです。しかしながら、この製品を手にとって頂けた顧客が、こちらの会社の製品に興味があって発注するフックにはなり得ます、そこを目指されていると考えます。

これは地場産品なので、他の地方では類似商品が出しにくくなります。生産者は地元に限定されるので、利益を還元できます。これがヒットした上で、同じようなパッケージにしてシリーズ商品として『きりたんぽ』を秋田で出して貰う、そしてそれぞれで販売を補完する、そうしてビジネスを回す手法も考えられます。 もちろん、白石市できりたんぽを製造したり、秋田の企業と連携することも可能です。きりたんぽにずんだを和えて食べる食品(元々、ずんだ餅やずんだおはぎにはなっているので、米製品との味は意外といけると思います)を開発するコラボ、等も考えられます。

 こうすることで、他県との連携や地場産品の販路の開拓にも役立てられるでしょう。
一方、岩手や福島など、キャラクターが居ない県もあります、そうした地域はそれぞれの地域でキャラクターを描いて、勝手に展開すればいいのです。

また、ずん子を人寄せに使うなら、リアルイベントをやることも考えられます。例えば、

『ずん子のコスプレコンテスト!一等賞はずんだ温麺××時間の食べ放題』
(開催場所は白石城)
何時間にするかはTwitterで投票
などを企画する事です。くだらないという評価や、盛り上がらないことも、「盛り上がらない」ことがニュースになれば良いので、全く問題はありません。そうしたところにファンは付いてきます。流行っていないコンテンツは、「流行る前からオレは知っている」「自分が育てていく」という優越感を得る目的で、初期投資として喰い付くファンが居るからです。突っ込みどころを残す事は、大切です。その突っ込みどころに、ファンが参加することでコンテンツを盛り上げるので。そこがファン目線というものです。

こうした地場産品とのコラボという視点での展開の他に、キャラだけで売る、ファン向けの商品も考えられます。そちらは完全にアキバ等のショップで売ることを前提に出せば良いと思います。単純に売れなくても客引きになるのは、抱き枕等の接触感の得られる立体です。コスト度外視で人寄せに創る手は在ると思います。ブランディングがある程度、成立し認知度が上がり、「緑色で和服はずん子」というのが定着するようであれば、絵柄の応用で多くの展開も出来ると思います。


等と、考えていましたが。

お話を伺っている間、PCが空いていたのでちょっと作ってみました。BlenderをDLし、ずん子のデータをDL、Blenderでそのままレンダリングした静止画像と、温麺の写真と組み合わせてみました。ここまで正味、1時間くらいです。



商品の画像なので大概の場合は問題無いですが、何らか問題があると認識された権利者の方がいらっしゃる場合、連絡願います。

これからは、この素材から、自分たちが創作するにあたりどうするかを、検討します。まず、リソースが足りないので用意する、アイデアを出してソフトコンテンツを制作する、場合によっては既存商品とタイアップするためのマッチングをする、こうした流れをイベント化していこうと、考え中です。もちろん、学校なので、教育の一環として成立する内容でなければいけません。

コンテンツ展開の計画について、後日、このブログに載せようと思います。候補として考えるのは当然ながら、ゲームです。

2014年6月24日火曜日

「東北ずん子」のキャラクター活用について考える。その1

久しぶりの投稿です。
学校のブログは学校サイト内にもありますが、あちらは学校の紹介を中心としています。ここでは、授業のネタになる、本校以外の話を述べていきます。

で、今回は「東北ずん子」についてです。

このキャラクターは、以下のサイトで紹介されています。

版権フリーキャラクター「東北ずん子」 Official Website


 
このキャラクタは、サイトに示してある通り、

東北ずん子は東北6県の企業さんであれば無料でイラストを使えるキャラクター

です。このキャラクターの利用に関したルールはとても緩く、2次創作や商用利用も東北の企業(この定義の規定が細かくは無いですが)であればフリーになっています、許諾すら不要と謳われています、詳しくはガイドラインを参照して下さい。

このキャラクターを地方のビジネスに活かした事例を紹介するイベントが、宮城県白石市で開催されました。開催したのは白石市の商工会議所です。

2014.3.27キャラクター活用講座(工業部会主催)

上記は、2回の開催のうちの、1回目です。2回とも参加しました、2回に分けてお送りします。
以下はその内容と、感想です。


●事例は(地場産品orずんだ味)+ずん子、スタンプラリー

 先ずはじめにスピーカーの紹介がなされ、話が進められていきました。登壇されたのは、痛タクシーでお馴染みの菊池タクシーの田中健一氏不忘印刷所の山田吉訓氏の二方で、それぞれのお話を拝聴しました。
商品化された実物を交えながら、その経緯などの説明を頂きました。勿体無いことに残念ながらインターネット上で公開されていないのと、資料を頒布されただけで公開していいかも判らない状態だなので、記憶にある幾つかの商品を紹介します。
  • 東北ずん子のラベルを付けた米
    大分、昔に流行った萌え米のアイデア、ほぼそのまま
  • ずんだ餅
    パック入りずんだ餅のラベルにずん子の絵を載せてある
他にも幾つかも在りましたが、基本はなにか既存商品にラベルを添付、という形です。ちなみに、白石市はずんだ餅を名物とはしておりません。宮城県内でよく食されますが、特に名物と謳ってはいません。
この他に、スタンプラリーが開催されています。
東北ずん子 奥州白石女傑物語スタンプラリー
http://fuboh.jp/michinavi/driveplan_spot_zunko.html
このスタンプラリーで回るポイントで、ずん子商品が提供されていました。簡単なバッジ商品と、ずんだ商品を作ってそれにバッジ、という形が殆どです。

●安易なラベル添付だけの商品は惹かれない(田中氏)

簡単に考えつくのは、自社製品のラベルにずん子のイラストを加える事ですが、それではファンがつかない、ファンと同じ目線で創ることが大事、という話をされました。田中さんはそのご趣味から、こうしたキャラクターにはファン目線を持ち併せられており、詳しく商品開発に関してコメントされていました。商品の提供を想定されているこのセミナーの聴者は、ほぼこうしたキャラクタービジネスには詳しくないと思われました。そうなると、なかなか客層と合わせた商品というのは難しい、ということです。

●他事例の比較、戦国BASARAの商品開発では難航(山田氏)

続いて、こうした商品開発での印刷物の請け負いをされていた、山田氏からのお話。数年前、白石市の商店では、戦国BASARAのアニメという戦国武将のゲームが元のテレビアニメの放映時、登場人物である、地元の武将である片倉小十郎をモチーフにした商品開発をしていました。アニメーションの放映期間は3ヶ月のみで、その期間で原稿やゲラの校正を繰り返すうち、商品の発売する頃にはアニメの放映が終了していた、とのことでした。版権元の確認作業はかなり厳しい上に担当とのやりとりがスムーズには進めにくかった、とのことでした。
放映当時、ピザハットでもBASARA商品の絵柄が使われており、それとは差があった、とのことでした。
 比較すると、ずん子の場合は版権処理が容易で校正を必要としないため、簡単に進められた、とのことでした。



簡単にまとめると、こうした説明で終わりました。終了後の公開での質疑応答はありませんでした、こうしたセミナーでは通例なので、とても意外でした。

これら説明を拝聴した上での、考察と感想です。

■ファン目線での商品開発を、コミケで売れるまんじゅうを

田中氏もお話されていましたが、安易なパッケージに乗せる作戦では、ファンの琴線に触れません。その商品がもつ本来の価値以上の物を生み出すには、欲しがられる物を提供する必要があります。
こうした取り組みの初期ヒットである萌え米がブームになった時は、「コメにこの絵柄か」ということが話題となりました、そして、アキタコマチだったのでそれが女子の擬人化がやりやすかったことがあります。現在ではありふれているアイデアで、その「やってしまった感」による商品価値はありません。どう魅力を訴えるかは、商品開発者もファンになるべきです。流行っていないキャラクターの商品は、完全にお笑いネタですから、「こんなの作っちゃったの?」というノリです。例えば、誰も知らない素人オジサンの写真を缶バッチにして売ると、「誰から知らないけど面白い」というところが商品価値になります。同人作家はマンガなどを何でも作るので、その人達が創るのがマンガであるところを、我々はまんじゅうにしたよ、という意識が必要です。まんじゅうをコミケで売るくらいの気合が必要です。

■コアコンテンツが無いのでイメージを売りにくい

全般的にフリーで、コンテンツが提供されているのは簡単な設定とイラストのみです。これを元にキャラクターグッズを展開するのは珍しく、どうすれば惹きつける商品になるのか、難しいと感じました。
同じような二次創作のキャラクターでビジネス的に成功をおさめたものに「初音ミク」があります。こちらはVocaloidソフトとして、歌声はあるが人物の画像はパッケージ画像のみ、というところがスタートでした。ファンは歌声しか無いミクの歌う姿を観たいと考え、立体化し、実物が存在するかのようなコンテンツを創ることに腐心しました。そして、声しか無いキャラクタの動く画像を観たい、というファンも居て、相乗効果で拡がりました。そこからフィギュアやコンサートまで展開さてるに至り、大きなビジネスになりました。
他方、ずん子の場合はキャラクターイラストは在るものの、深い物語がある訳でもなく、また、サンリオ商品のように絵柄が多くの人を強く惹きつけるにも至っていません。元々のファン層、というものが無いため、キャラクター商品も設定しにくくなっています。アニメなどの著名なコアコンテンツがあれば、その絵柄のシールやお菓子等も売り込みやすいです。ずん子はコアが無いため、そのコア自体を先ず創りだす必要があるかも知れません。

■BASARAでの難航の認識のズレ

BASARAでの展開が難航したのは、容易に想像が出来ました。BASARAの版権元にはビジネス的に大きくないと判断されているからです。白石市の商品が売れることが、BASARAの宣伝効果にはほとんどなりません。白石の市街地で販売する数が僅かな商品によって、版権元は宣伝効果を評価はしないでしょう。ライセンシーの商品ロットが大きければ版権料の徴収でのビジネスによる評価をするでしょうけど、それには至らない、ということです。ピザハットの場合は、逆にライセンサーから話を提案していたのでは無いでしょうか?ピザの箱に広告を載せる枠を買う、ということです。この場合はライセンサーが売り込む側なので、どんどん話を進めて、アニメ放映時に盛り上げる一助にしたい、と考えたはずです。こうした説明で大体は、説明がつきます。

■成功?失敗?効果的??拡大意欲??

前述のキャラ展開ビジネスで、結果的にキャラクターが売上に貢献したのか、定かではありませんでした。その企業の前年同月比での粗利率などがあれば、ある程度の判断が出来たと思います。スタンプラリーも参加者数はそれほど多くなく、白石市街地の来訪者数に寄与したかも分かりません。これは、ライセンサーに支払うコストが無いので深く考えていない、ということだと理解しています。
このキャラクターを活かしたビジネスをするには、多少なりともノウハウが要りますが、それぞれの商店が先ず考え、直接にずん子イラストの運営者と交渉して進めれば良い、と考えました、それこそがCGMです。しかしながら、その空気は希薄でした。先行者がノウハウをライセンス、或いはコンサルする考えが働いているように見えました。フリーのコンテンツなのに囲うのは勿体無いです。開発した商品は商工会議所のWebに載せるとのことでしたが、アクセスが集まっているとは思えません。取り組みを新聞で紹介された話もありましたが、成否にはあまり関係ありません。新聞読者が顧客層と全く違いますから。
また、開発された商品の事例に白石市の名産品が殆ど無いことが、危機であると感じました。ライセンサーがフリーとしている限り、何処でも容易に作れます。ずんだ餅や豆が白石市の名産ではありません。ライセンサーがどう判断するか判りませんが、東北地方にトンネル会社を作れば他県の企業もフリーの利用が出来る可能性があります。今はそのコストに見合う売上はずん子から享受は出来無い、ということだと思います。


そんなことを考えていると、第二回の話が出ました。自分が考えた疑問点や、ビジネススキームとしてどうなっているのかを知る機会になると期待して臨みました。という話は続きで