2014年8月18日月曜日

Unityとゲームジャムの構図

さて、先日、Unityのセミナーに参加しました


Unitiyはインストールを数年前にはしていましたが、まともに使っていませんでした。覚えなきゃなと思いつつ、まあ、やれば直ぐに覚えられるだろう、と勝手に思っていました。

そんな感じで、
全体的に、かなり今さら感のある話

だと思いますが、Unityやゲームジャムの事が新鮮である方には、少しは面白く感じられる話かと。

Unityのとは

先ず、Unityが何かということから。簡単にいうと、こんな感じです。
  • ゲーム開発を容易に出来るようにした開発環境ソフト
  • 3Dのゲーム開発環境では稀な無償提供版がある
  • iOS,Android,Windows,ゲーム機などのマルチプラットフォームのソフトが作れる
 上記のどれかを満たすものは以前から在りますが、どれも満たすものはこれまで在りませんでした。有料版も在りますが、最終的な出力の最適化が変わりますが、何が作れるかは大きく変わりません。無償で提供されていますから、誰でも使えます。触ってみたい人はどうぞ。

http://japan.unity3d.com/

これが画期的と思われている点は、上記の項目を満たすものがほほ、無かったからです。この「画期的」という目線が、立場によって変わります。
自分が率直に思ったのは、

Unity=(Flash+3D-タイムライン)×マルチプラットフォーム

っていう感覚、同感な方も結構、居ると思ってるんですけど、如何でしょうか?

「簡単に作れんじゃん!」、創りたい人から見たUnity

 Unityのウリは「3Dゲームが容易に作れる」、というところです。従来からあるツールでは、近いものにはFlashが在りますが、有料でマルチでなく2Dのみです、その裏返しになります。他にもフリーで使えるものが在りますが、3Dを扱えて無料のもので機能が豊富なものは、他には在りませんでした。そう考えると、簡単に3Dゲームが無料で作れちゃう!ということがフックになって、アマチュアやゲームに参入していない企業から魅力に映ったと思います。

「使わなくて済むよ」、既存開発者から見たUnity

他方、ゲーム開発をしている方々からの目線は違います。先ず、無料であることは重要では無くなります。販売するソフトに使う場合は、通常のデベロッパは様々な開発ツールでプロ版のライセンスを購入しなくてはなりません。この時考えるのは、費用対効果です。製品開発コスト全体を見た場合、無料であることは重要では無くなります。逆に、無料で手に入れても、デバッグで支障が出てしまうとそのコストが嵩んでしまうため、無料であることの意味は成さなくなります。LinuxのSIerでも在った話です。
また、Unityで再現される機能は、開発経験のある企業であれば自前のライブラリやツール群があるので、特にUnityを使わなければならない理由が在りません。用意されている部分のチューニングが要ると思われる部分が多々あります、海外製の物理的センスで動くところなどです。日本国内のものは演出の仕方が少し違います。

意識の差は「ゲーム」の認識の差

デベロッパがUnityに魅力を感じるとすれば、簡単なプロトタイピングが非プログラマでもし易い、という処でしょう。細かい作り込みは置いておいて、アルゴリズムの妥当性は確認出来そう、という使い方です。もちろん、最後までUnityで作ってしまおうという事も実際には行われていますし、ここは内容に依ると思います。物理演算等の動作自体に複雑性が無く、レベルデザインでゲームを拡張していけるものには向いています、それはスマホのカジュアルゲームによくある物です。
他方、Unityで「ゲームが簡単に作れる」ことをメリットとして見ている人達には、3Dでキャラクタが動いたり物理的な動きをしてくれることが「ゲームぽさ」になっています。デベロッパは、そこでとどまることはゲームと考えていません。そこの意識の差が、Unityの評価の差に表れています。

ゲームジャムではUnityのようなツールが適している

ゲームジャムで創られるソフトは、「ゲーム的なものを創る」ことが目的で、それによる開発費と売り上げを考えて制作することは目的になっていません。

ジャムで創られるものだけでは、お金にはなりにくいです。数日で制作できた、ということは、誰でも真似ができる可能性があり、誰かが「お金を出して手に入れたい」と思えるレベルには、容易に到達するのは難しいです。売ることを目的としていませんから当然といえます。

他方、プロダクトとしてのゲームは、一朝一夕で作り上げることは不可能な面白さにコストをかけることで差別化を図り、マネタイズに繋げています。ただ、デベロッパも多様なアイデアや迅速な開発を求める処もあるわけで、そこで少しジャムに近づきたい心持はありと思います。

売ることを目的としていない、誰でも製品未満のものを作り出すにはUnityが向いていて、それがゲームジャムなどで多く使われる理由になっていくだろう、と思いました。初対面同士での共通基盤になりうるには、フリーだし使いやすい、といことです。もちろん、moonblockなどのJavascript系でも構いませんし、色々あっていいと思います。

っていう、
全体的に、かなり今さら感のある話

だと思いますが、Unityやゲームジャムの事が新鮮である方には、少しは面白く感じられる話かと。

2014年8月4日月曜日

今流行!ゲームジャムからのビジネスはありか?

学校からのお知らせ的な内容ではないもいのは、こちらに述べていきます。

さて、最近、学校で開催した「D-JAM」、そして「福島GameJam2014宮城・仙台サテライト」と、ゲームジャムイベントが続きました。私はそれぞれ開催サポートと見学という形で覗いていました、それらから考えた感想です。

ゲームジャムってまず、なんぞ

JAMは音楽的なジャムセッションのJAMです、煮詰めたいちごではありません。簡単に言うと、色々な知らない同志が集まって、与えられた短期間で完成を目指しゲームを制作するイベントです。同じようなイベントにハッカソンやアイデアソンなどが挙げられます。いずれも、イベントとして企画されたアイデア出しから制作を行うものです。

こうしたものが流行りだした背景には、ITの変革が挙げられます。
  •  アイデアからサービスを構築し利益を得る、第二のザッカーバーグを目指す人が居る
  • インターネット上でイベント企画からチケット販売、連絡などが簡単に取れるようになっている
  • ゲーム等のソフトウエア開発の敷居が低く見られている(PCとネットだけで開発できる)
こうしたことが挙げられます。10年前では不可能だったことが可能になっています。参加者の意志は、多用だと思います。
  • アイデアの種を仕入れてビジネスにしたい
  • 集まる人達と連携を図るための出会いの場としたい
  • 単純に何か作るのが好き
  • お役所の助成でやってるので参加しておく
こんなところでしょうか、兎に角、いたるところで開催されています、全てを追うのは既に難しいです。そうした中で開催された、最近の2つから、考えていきます。

出来上がったゲームはどんな感じか

2つのイベントで出来たゲームは、それぞれのページから御覧ください。と、まとまった情報としては他からLinkされることはあっても、積極的な宣伝はしていません。出来上がったゲームの感想を率直にいうと、「短時間で作られたゲーム」です。そんなのは当たり前だ という指摘はごもっともなんですが、言い得て妙なところがありまして。

短時間で作られていますから、当然、作りこんでいる部分はあまり無い訳です。ゲームを創りだす場合、先ずは最低限のシステムから作ります。例えば「モグラたたき」なら、
  1. もぐらの穴を描いて配置
  2. もぐらの絵を用意
  3. 画面上に点数、時間、穴の配置を決める
  4. もぐらの出るシステムをプログラミング
  5. もぐらを叩くと点数が入るプログラミング
  6. 時間制限でゲームオーバーにするプログラミング
  7. ゲームオーバーから再プレイへの部分をプログラミング
これで、ゲームは完成!と思いたいところですが、そうはいきません。
面白くなければゲームじゃない
からです。

堅気のプログラマだと、あとはバグチェック出来てリリースとなりますが、本当の要件が実現されているのか、確認されていないのです。
作りたいのは、
「もぐらたたきシステムver1.0」
ではなく、
「面白いもぐらたたき」=「モグラたたきゲーム」

なのですから。上記の仕様を満たすだけのプログラミングは、実はとても簡単です。プログラミング言語を何を用いても、動かしたいデバイスが何なのかが変わっても、ほとんど同じコードになります。ここまで作るのは、普通のプログラマで可能です。

実際に仕様書通りで創りだされたゲームは、面白さをどう創りだすのかが判りません。例えば、もぐらを叩いた時に、また叩けるとダメなのでもぐらを消して、穴の表示だけに戻すとします。こうなると、もう一度叩く事が出来ないので点数が入りすぎるのは防げますが、プレイヤーは面白いとは感じません。逆に、「何故、もぐらが消えたのか」、「何が起こった?」と思うことがあり得ます、一瞬ですから。

そうなるとつまらないので、もぐらがヤラれたらその様子を見せると、プレイヤーは安心します。例えばヒット音が出て、もぐらがめまいしてふらふらして穴に戻る、などです。これは、クリエイターからのプレイヤーへのメッセージなのです、「こうして遊ぶゲームです、いまのはナイスですよ!」と伝えている訳です。こうなると、プレイヤーがソフトと感情面で対話するので、面白さが出てきます。 ここまで出来て、最低限の「ゲーム」です。

これをプログラミングすると、モグラの状態として「やられ」が追加され、その画像を作り、そして、その時に押されても点数は入らず、また、そのモーションが終わって少し経たないとモグラは出せない、ゲームオーバーの時でもヤラれモーションは最後まで出す、等の制御をする必要があります、意外と面倒と感じる人も居る筈です。

更に、プレイヤーにどう遊んでもらうかによって、例えばもぐらの出現する規則で変えて爽快感を演出するなら、初めは左から順番に出るようにしてどんどん倒して快感を得られるように学習してもらって、その順番でモグラのやられアニメーションが次々再生されると、楽しく感じるでしょう。規則がある出現でその規則が切り替わり、法則を見つけられると点数が高い、ある程度のスコアや、連続ヒット数でどでかいハンマーを出すと、全部を倒せるけど、そこまで頑張る必要がある、等の戦略を作り出していきます。

翻ってジャムで作られる作品は、そうした作り込みまで達しづらいです。何故かと言うと、
  1. 時間制限が短いので、完成まで漕ぎ着けるのが目標となり、先ずは仕様通りに作ることに執心し、そこが完成になりがち。
  2. 上記の様な演出部分に対する必要性が、プレイヤーによるフィードバックが少ないために気づきにくい
  3. 演出面を作ろうとすると、作業量が非常に多い
    (上記のモグラのやられアニメなら全体の30%くらい?見直すのは全部になる)
ということになり、作りこみと時間の戦いで難しい判断を求められます。そして、楽しく作ろうと思ってやっていると、その辺の部分が作業量が急に追加された感じがしてやる気が削がれる、ということもあります。

ゲームジャムの目的が「面白いゲームを作る」というジャッジがなされるまで実施されていないので、出来た作品の評価はあまり看過しないイベントとしては成功、と言えます。そういう意味で、「短時間で作られたゲーム」、と思った次第です。

ゲームデベロッパが参加しないことの理由

このイベントに、どうしてゲーム開発をしている現役の人達が参加しないのだろう?と思う方々もいらっしゃるようです、そうした人達ならもっと凄いのを作れるからです。でも、それはあまり期待できないと思ってます。何故なら、
  1. 仕事で制作すればお金になるのに、無料でやる価値が見いだせない
  2. 作られたものの権利はどうなるのか判りにくいし、他人に譲渡したくない
  3. 短期間のプロトタイピングならイベントでやる必要が無い
こんなところでしょうか。例えば料理人が知り合いから「今度、ホームパーティーするんでタダで料理作ってよ」と言われて、快諾する人はあまり居ないと思います。「今回はダタですけど、お気に召した方は有料で承ります」 という宣伝でいくなら、未だ少しやる気になるでしょうか。でも、「この前の料理おいしかったから、君から頼んだことでタダで出来ないかな?」と、虫のいい知人も現れる事でしょう、もう面倒なので嫌になります。ていうのを、これを見て思い出しました。

これから先もデベロッパに在籍するクリエイターが来ることは少ないでしょう、参加にメリットが見いだせない限り。出来た作品はデベロッパでも見てると思いますが、これに2日は対価として見合わない、企画段階で没になる、と思っている可能性があります、そこは目標が違うから仕方がないです、「作ってみよう」と「ビジネスとして売る」ことは、根本的に違います。上記の作り込みまでを完成として考えて企画し、面白味が明確化し、マーケットの予想をしたところからコーディングでプロトタイプを作るのが、実際のデベロッパだと思います。

 「アイデアをここから得てビジネスに繋げよう」という目的で来ることはないのか?と思われる方もいるかもしれませんが、実際にゲームにしていないアイデア出しは、ほとんどのゲーム開発企業でやっています。新規性が見られるアイデアでもビジネスになるのかは別で、「発想は新しいけどお金にならないからやらない」というアイデアは多いです。また、無料で遊べるゲームがかなりの作り込みがなされている現在、売り物になるまで作りこむコストを評価するとどうなのか考えると食指が動くものではない、というのが本音では無いでしょうか。あり得るとすれば、そこで人材を発掘したい、という部分です。新卒者のコミュニケーション能力を見るには、良いイベントです。

出来たものから参加者がビジネスに繋げるのは難しいが

デベロッパが食指を動かさないなら、参加者で制作を継続してビジネスに繋げる、という方法論は別に検討できます。参加していない私には想像になりますが、疲れるから嫌になると思います。その限定された期間で作業する事で、どこまで作るか仕様を絞っていたり、あとxx時間は頑張れると思って出来る努力を、ビジネスとして成立するまでの作り込みする余裕は少ないと思います。本業が別にある人達ですから、ビジネスにならない事に時間を割くのは難しいでしょう。製品にするには、実際のデベロッパがフルタイムで数ヶ月間を要したソフトに対抗する必要があります、それにはやはり大きな人的リソースの投入が絶対的に必要です。片手間で出来るかというと、容易ではありません。そこを突き抜けられる人が成功する可能性も秘めていますが、仕事をやめてこれに没頭しようと決断出来る人は、なかないか居ないと思います。

考えられる事は、その成果物をデベロッパに買い取ってもらうことです。作業量として見積もるとかなり安いと思いますけど、そこから製品化まで漕ぎ着けるところをデベロッパに委ねて、自分の名前が「原案 xxxx」とかスタッフとしてクレジットされるだけでも楽しいのでは無いでしょうか。 製品化まで作ったらデベロッパが買い取る、という方策もありますが、そこは難しいでしょう。ハッカソンはそうした流れで出来ているイベントもあるので、ゲームも開催母体がゲームパブリッシャ、となれば変わる可能性があります。


ゲーム好きにもレベルがある




http://www.sugawara.ac.jp/digital/game/

これはうちの学校のパンフやHPに載せてる図です。ジャム参加者は上記Lv3に相当すると思います、デベロッパはLv5です、そこには差があります。他方、作るのが好きすぎてきれいなコード書いてうっとり出来る人も、デベロッパには向いていると言えますので、上記が一元的では無いと思って下さい。



色々ととりとめなく書きましたが、デベロッパを目指す、本校のような学生がジャムに参加するメリットは、
  1. 完成までの工程を見渡したスケジュール管理の必要性を、理解出来る
  2. ゲームデザイン・プログラム・グラフィックで何をするのか垣間見れる
  3. 貢献度で自分の能力を計ることができる
  4. コミュニケーション能力が鍛えられる
  5. 知らなかった人とコミュニティを形成し制作に役立てられる
    (出来ないことをしてもらい協調作業が出来る)
というところです。自分もほぼ初めて、後輩と話が出来ました。これは良い事です。
メリットをしっかり見据えた上で、これからもどんどん、参加して欲しいと思います。

2014年6月25日水曜日

「東北ずん子」のキャラクター活用について考える。その2

さて、前回の続きの話です。

白石市でやった、実例の案内のセミナー第2回からの考察です。

今回は2回めなので、前回より深い考察や、紹介されなかった実例を知ることが出来るだろうと、期待を持って臨みました。


そして、実は仙台から移動する際、時間がギリギリだったため新幹線を利用しましたが乗ろうとした列車が臨時列車で運行せず、少し遅れて参加となってしまいました、残念。開始から15分くらいだったので、何方かお歴々のご挨拶を賜る時間に居れなかっただけで、他は拝聴できたと考えています。

今回のスピーカーは前回と同様のお二方に加え、東京・阿佐ヶ谷にオープンし阿佐ヶ谷アニメストリートのずん子ショップ「OUTPUT」店長の片谷国康氏をお招きしての開催です(ずん子だけの商売をされているわけではありません)。

色々と話はありましたが、かいつまんで説明すると、
  • 前回と同じお二人からの話は、ほぼ、前回と同じ
  •  阿佐ヶ谷で商品を置いている
  • 白石市内での開発による商品は少しだけ増えている
という話でした。
つまり、いま一つずん子の商品開発の話は同じであり、あとは販売企業の話となるとコンテンツそのものの話が乏しいだけでした、商品を卸して下さい、という事だと理解していますが、集客力や実績のデータは明確には提示されませんでした。
そんな感じで、話が記憶に残っていません。「記録を取れよ」というご指摘も重々、承知しておりますが、自分の尺度で必要なことはメモしておりました。それでこの結果ですので、ご承知おき下さい。そして、最後に質問コーナーとか在るといいと思っていました。が、残念ながら在りませんでした、その後、懇親会があるので宜しく、とのお達しを承り、終わりました。ビジネス展開に興味の在る店主さんは、これまでの展開されている企業に聞いて下さい」、で終わっていました。


結論から言いますと、これに尽きます。

版権コストが無いので効果を精査していない

ということです。商工会に参加されている企業のお歴々は、ずん子のコンテンツそのものには興味がなく、ビジネスとして捉えてられているとして、このキャラクターはコストが低いので利益を上げやすい、という観点が強いとも見て取れませんでした。他県等の団体からの視察があるということに反応されている参加者もいましたが、それがビジネスの成功には繋がっていません。
ずん子の痛バスは走っていますが、これで利益が上がるのは、ラッピングの制作を市役所から受託した企業の他、どこになるのでしょうか。ちなみに私も市民ですが、地元ですら全く話題になっていません。白石市・商工会の取り組みがどこかで取り上げられたとしても、直ぐに「第二の『ずん子の里』」は、容易に構築できます。

恐らく、こうした地場産業の振るわない過疎傾向の地方都市では、「ずん子でスポットライトを当てられる街にしたい」ということが目的になっていると思います。そこでキャラクターを推すことで目立ったとしても、その先の展開は難しくなります。キャラクターだけ目立つと、その地元の空疎感を強めます。

そうした中で今回で唯一、成果を上げて欲しいと思ったのは、こちらの商品です。一回目のセミナーで、社長さんに推したアイデアです。



下の画像はAmazonへのリンクになっています。
お求めになりたい方は、上記の製造企業か、何れかでお買い求め頂けます。
>
Amazonで売っているのは流石だと思います。

ちょっと惜しいのは上手く出来過ぎているので、ファン向けというよりも、「可愛いパッケージだから買ってみよう」というひとが購入するだろう、というところです。簡単に言うと、温麺を買いたい人の母数から大きくはみ出さない、というところです。しかしながら、この製品を手にとって頂けた顧客が、こちらの会社の製品に興味があって発注するフックにはなり得ます、そこを目指されていると考えます。

これは地場産品なので、他の地方では類似商品が出しにくくなります。生産者は地元に限定されるので、利益を還元できます。これがヒットした上で、同じようなパッケージにしてシリーズ商品として『きりたんぽ』を秋田で出して貰う、そしてそれぞれで販売を補完する、そうしてビジネスを回す手法も考えられます。 もちろん、白石市できりたんぽを製造したり、秋田の企業と連携することも可能です。きりたんぽにずんだを和えて食べる食品(元々、ずんだ餅やずんだおはぎにはなっているので、米製品との味は意外といけると思います)を開発するコラボ、等も考えられます。

 こうすることで、他県との連携や地場産品の販路の開拓にも役立てられるでしょう。
一方、岩手や福島など、キャラクターが居ない県もあります、そうした地域はそれぞれの地域でキャラクターを描いて、勝手に展開すればいいのです。

また、ずん子を人寄せに使うなら、リアルイベントをやることも考えられます。例えば、

『ずん子のコスプレコンテスト!一等賞はずんだ温麺××時間の食べ放題』
(開催場所は白石城)
何時間にするかはTwitterで投票
などを企画する事です。くだらないという評価や、盛り上がらないことも、「盛り上がらない」ことがニュースになれば良いので、全く問題はありません。そうしたところにファンは付いてきます。流行っていないコンテンツは、「流行る前からオレは知っている」「自分が育てていく」という優越感を得る目的で、初期投資として喰い付くファンが居るからです。突っ込みどころを残す事は、大切です。その突っ込みどころに、ファンが参加することでコンテンツを盛り上げるので。そこがファン目線というものです。

こうした地場産品とのコラボという視点での展開の他に、キャラだけで売る、ファン向けの商品も考えられます。そちらは完全にアキバ等のショップで売ることを前提に出せば良いと思います。単純に売れなくても客引きになるのは、抱き枕等の接触感の得られる立体です。コスト度外視で人寄せに創る手は在ると思います。ブランディングがある程度、成立し認知度が上がり、「緑色で和服はずん子」というのが定着するようであれば、絵柄の応用で多くの展開も出来ると思います。


等と、考えていましたが。

お話を伺っている間、PCが空いていたのでちょっと作ってみました。BlenderをDLし、ずん子のデータをDL、Blenderでそのままレンダリングした静止画像と、温麺の写真と組み合わせてみました。ここまで正味、1時間くらいです。



商品の画像なので大概の場合は問題無いですが、何らか問題があると認識された権利者の方がいらっしゃる場合、連絡願います。

これからは、この素材から、自分たちが創作するにあたりどうするかを、検討します。まず、リソースが足りないので用意する、アイデアを出してソフトコンテンツを制作する、場合によっては既存商品とタイアップするためのマッチングをする、こうした流れをイベント化していこうと、考え中です。もちろん、学校なので、教育の一環として成立する内容でなければいけません。

コンテンツ展開の計画について、後日、このブログに載せようと思います。候補として考えるのは当然ながら、ゲームです。

2014年6月24日火曜日

「東北ずん子」のキャラクター活用について考える。その1

久しぶりの投稿です。
学校のブログは学校サイト内にもありますが、あちらは学校の紹介を中心としています。ここでは、授業のネタになる、本校以外の話を述べていきます。

で、今回は「東北ずん子」についてです。

このキャラクターは、以下のサイトで紹介されています。

版権フリーキャラクター「東北ずん子」 Official Website


 
このキャラクタは、サイトに示してある通り、

東北ずん子は東北6県の企業さんであれば無料でイラストを使えるキャラクター

です。このキャラクターの利用に関したルールはとても緩く、2次創作や商用利用も東北の企業(この定義の規定が細かくは無いですが)であればフリーになっています、許諾すら不要と謳われています、詳しくはガイドラインを参照して下さい。

このキャラクターを地方のビジネスに活かした事例を紹介するイベントが、宮城県白石市で開催されました。開催したのは白石市の商工会議所です。

2014.3.27キャラクター活用講座(工業部会主催)

上記は、2回の開催のうちの、1回目です。2回とも参加しました、2回に分けてお送りします。
以下はその内容と、感想です。


●事例は(地場産品orずんだ味)+ずん子、スタンプラリー

 先ずはじめにスピーカーの紹介がなされ、話が進められていきました。登壇されたのは、痛タクシーでお馴染みの菊池タクシーの田中健一氏不忘印刷所の山田吉訓氏の二方で、それぞれのお話を拝聴しました。
商品化された実物を交えながら、その経緯などの説明を頂きました。勿体無いことに残念ながらインターネット上で公開されていないのと、資料を頒布されただけで公開していいかも判らない状態だなので、記憶にある幾つかの商品を紹介します。
  • 東北ずん子のラベルを付けた米
    大分、昔に流行った萌え米のアイデア、ほぼそのまま
  • ずんだ餅
    パック入りずんだ餅のラベルにずん子の絵を載せてある
他にも幾つかも在りましたが、基本はなにか既存商品にラベルを添付、という形です。ちなみに、白石市はずんだ餅を名物とはしておりません。宮城県内でよく食されますが、特に名物と謳ってはいません。
この他に、スタンプラリーが開催されています。
東北ずん子 奥州白石女傑物語スタンプラリー
http://fuboh.jp/michinavi/driveplan_spot_zunko.html
このスタンプラリーで回るポイントで、ずん子商品が提供されていました。簡単なバッジ商品と、ずんだ商品を作ってそれにバッジ、という形が殆どです。

●安易なラベル添付だけの商品は惹かれない(田中氏)

簡単に考えつくのは、自社製品のラベルにずん子のイラストを加える事ですが、それではファンがつかない、ファンと同じ目線で創ることが大事、という話をされました。田中さんはそのご趣味から、こうしたキャラクターにはファン目線を持ち併せられており、詳しく商品開発に関してコメントされていました。商品の提供を想定されているこのセミナーの聴者は、ほぼこうしたキャラクタービジネスには詳しくないと思われました。そうなると、なかなか客層と合わせた商品というのは難しい、ということです。

●他事例の比較、戦国BASARAの商品開発では難航(山田氏)

続いて、こうした商品開発での印刷物の請け負いをされていた、山田氏からのお話。数年前、白石市の商店では、戦国BASARAのアニメという戦国武将のゲームが元のテレビアニメの放映時、登場人物である、地元の武将である片倉小十郎をモチーフにした商品開発をしていました。アニメーションの放映期間は3ヶ月のみで、その期間で原稿やゲラの校正を繰り返すうち、商品の発売する頃にはアニメの放映が終了していた、とのことでした。版権元の確認作業はかなり厳しい上に担当とのやりとりがスムーズには進めにくかった、とのことでした。
放映当時、ピザハットでもBASARA商品の絵柄が使われており、それとは差があった、とのことでした。
 比較すると、ずん子の場合は版権処理が容易で校正を必要としないため、簡単に進められた、とのことでした。



簡単にまとめると、こうした説明で終わりました。終了後の公開での質疑応答はありませんでした、こうしたセミナーでは通例なので、とても意外でした。

これら説明を拝聴した上での、考察と感想です。

■ファン目線での商品開発を、コミケで売れるまんじゅうを

田中氏もお話されていましたが、安易なパッケージに乗せる作戦では、ファンの琴線に触れません。その商品がもつ本来の価値以上の物を生み出すには、欲しがられる物を提供する必要があります。
こうした取り組みの初期ヒットである萌え米がブームになった時は、「コメにこの絵柄か」ということが話題となりました、そして、アキタコマチだったのでそれが女子の擬人化がやりやすかったことがあります。現在ではありふれているアイデアで、その「やってしまった感」による商品価値はありません。どう魅力を訴えるかは、商品開発者もファンになるべきです。流行っていないキャラクターの商品は、完全にお笑いネタですから、「こんなの作っちゃったの?」というノリです。例えば、誰も知らない素人オジサンの写真を缶バッチにして売ると、「誰から知らないけど面白い」というところが商品価値になります。同人作家はマンガなどを何でも作るので、その人達が創るのがマンガであるところを、我々はまんじゅうにしたよ、という意識が必要です。まんじゅうをコミケで売るくらいの気合が必要です。

■コアコンテンツが無いのでイメージを売りにくい

全般的にフリーで、コンテンツが提供されているのは簡単な設定とイラストのみです。これを元にキャラクターグッズを展開するのは珍しく、どうすれば惹きつける商品になるのか、難しいと感じました。
同じような二次創作のキャラクターでビジネス的に成功をおさめたものに「初音ミク」があります。こちらはVocaloidソフトとして、歌声はあるが人物の画像はパッケージ画像のみ、というところがスタートでした。ファンは歌声しか無いミクの歌う姿を観たいと考え、立体化し、実物が存在するかのようなコンテンツを創ることに腐心しました。そして、声しか無いキャラクタの動く画像を観たい、というファンも居て、相乗効果で拡がりました。そこからフィギュアやコンサートまで展開さてるに至り、大きなビジネスになりました。
他方、ずん子の場合はキャラクターイラストは在るものの、深い物語がある訳でもなく、また、サンリオ商品のように絵柄が多くの人を強く惹きつけるにも至っていません。元々のファン層、というものが無いため、キャラクター商品も設定しにくくなっています。アニメなどの著名なコアコンテンツがあれば、その絵柄のシールやお菓子等も売り込みやすいです。ずん子はコアが無いため、そのコア自体を先ず創りだす必要があるかも知れません。

■BASARAでの難航の認識のズレ

BASARAでの展開が難航したのは、容易に想像が出来ました。BASARAの版権元にはビジネス的に大きくないと判断されているからです。白石市の商品が売れることが、BASARAの宣伝効果にはほとんどなりません。白石の市街地で販売する数が僅かな商品によって、版権元は宣伝効果を評価はしないでしょう。ライセンシーの商品ロットが大きければ版権料の徴収でのビジネスによる評価をするでしょうけど、それには至らない、ということです。ピザハットの場合は、逆にライセンサーから話を提案していたのでは無いでしょうか?ピザの箱に広告を載せる枠を買う、ということです。この場合はライセンサーが売り込む側なので、どんどん話を進めて、アニメ放映時に盛り上げる一助にしたい、と考えたはずです。こうした説明で大体は、説明がつきます。

■成功?失敗?効果的??拡大意欲??

前述のキャラ展開ビジネスで、結果的にキャラクターが売上に貢献したのか、定かではありませんでした。その企業の前年同月比での粗利率などがあれば、ある程度の判断が出来たと思います。スタンプラリーも参加者数はそれほど多くなく、白石市街地の来訪者数に寄与したかも分かりません。これは、ライセンサーに支払うコストが無いので深く考えていない、ということだと理解しています。
このキャラクターを活かしたビジネスをするには、多少なりともノウハウが要りますが、それぞれの商店が先ず考え、直接にずん子イラストの運営者と交渉して進めれば良い、と考えました、それこそがCGMです。しかしながら、その空気は希薄でした。先行者がノウハウをライセンス、或いはコンサルする考えが働いているように見えました。フリーのコンテンツなのに囲うのは勿体無いです。開発した商品は商工会議所のWebに載せるとのことでしたが、アクセスが集まっているとは思えません。取り組みを新聞で紹介された話もありましたが、成否にはあまり関係ありません。新聞読者が顧客層と全く違いますから。
また、開発された商品の事例に白石市の名産品が殆ど無いことが、危機であると感じました。ライセンサーがフリーとしている限り、何処でも容易に作れます。ずんだ餅や豆が白石市の名産ではありません。ライセンサーがどう判断するか判りませんが、東北地方にトンネル会社を作れば他県の企業もフリーの利用が出来る可能性があります。今はそのコストに見合う売上はずん子から享受は出来無い、ということだと思います。


そんなことを考えていると、第二回の話が出ました。自分が考えた疑問点や、ビジネススキームとしてどうなっているのかを知る機会になると期待して臨みました。という話は続きで