2014年8月4日月曜日

今流行!ゲームジャムからのビジネスはありか?

学校からのお知らせ的な内容ではないもいのは、こちらに述べていきます。

さて、最近、学校で開催した「D-JAM」、そして「福島GameJam2014宮城・仙台サテライト」と、ゲームジャムイベントが続きました。私はそれぞれ開催サポートと見学という形で覗いていました、それらから考えた感想です。

ゲームジャムってまず、なんぞ

JAMは音楽的なジャムセッションのJAMです、煮詰めたいちごではありません。簡単に言うと、色々な知らない同志が集まって、与えられた短期間で完成を目指しゲームを制作するイベントです。同じようなイベントにハッカソンやアイデアソンなどが挙げられます。いずれも、イベントとして企画されたアイデア出しから制作を行うものです。

こうしたものが流行りだした背景には、ITの変革が挙げられます。
  •  アイデアからサービスを構築し利益を得る、第二のザッカーバーグを目指す人が居る
  • インターネット上でイベント企画からチケット販売、連絡などが簡単に取れるようになっている
  • ゲーム等のソフトウエア開発の敷居が低く見られている(PCとネットだけで開発できる)
こうしたことが挙げられます。10年前では不可能だったことが可能になっています。参加者の意志は、多用だと思います。
  • アイデアの種を仕入れてビジネスにしたい
  • 集まる人達と連携を図るための出会いの場としたい
  • 単純に何か作るのが好き
  • お役所の助成でやってるので参加しておく
こんなところでしょうか、兎に角、いたるところで開催されています、全てを追うのは既に難しいです。そうした中で開催された、最近の2つから、考えていきます。

出来上がったゲームはどんな感じか

2つのイベントで出来たゲームは、それぞれのページから御覧ください。と、まとまった情報としては他からLinkされることはあっても、積極的な宣伝はしていません。出来上がったゲームの感想を率直にいうと、「短時間で作られたゲーム」です。そんなのは当たり前だ という指摘はごもっともなんですが、言い得て妙なところがありまして。

短時間で作られていますから、当然、作りこんでいる部分はあまり無い訳です。ゲームを創りだす場合、先ずは最低限のシステムから作ります。例えば「モグラたたき」なら、
  1. もぐらの穴を描いて配置
  2. もぐらの絵を用意
  3. 画面上に点数、時間、穴の配置を決める
  4. もぐらの出るシステムをプログラミング
  5. もぐらを叩くと点数が入るプログラミング
  6. 時間制限でゲームオーバーにするプログラミング
  7. ゲームオーバーから再プレイへの部分をプログラミング
これで、ゲームは完成!と思いたいところですが、そうはいきません。
面白くなければゲームじゃない
からです。

堅気のプログラマだと、あとはバグチェック出来てリリースとなりますが、本当の要件が実現されているのか、確認されていないのです。
作りたいのは、
「もぐらたたきシステムver1.0」
ではなく、
「面白いもぐらたたき」=「モグラたたきゲーム」

なのですから。上記の仕様を満たすだけのプログラミングは、実はとても簡単です。プログラミング言語を何を用いても、動かしたいデバイスが何なのかが変わっても、ほとんど同じコードになります。ここまで作るのは、普通のプログラマで可能です。

実際に仕様書通りで創りだされたゲームは、面白さをどう創りだすのかが判りません。例えば、もぐらを叩いた時に、また叩けるとダメなのでもぐらを消して、穴の表示だけに戻すとします。こうなると、もう一度叩く事が出来ないので点数が入りすぎるのは防げますが、プレイヤーは面白いとは感じません。逆に、「何故、もぐらが消えたのか」、「何が起こった?」と思うことがあり得ます、一瞬ですから。

そうなるとつまらないので、もぐらがヤラれたらその様子を見せると、プレイヤーは安心します。例えばヒット音が出て、もぐらがめまいしてふらふらして穴に戻る、などです。これは、クリエイターからのプレイヤーへのメッセージなのです、「こうして遊ぶゲームです、いまのはナイスですよ!」と伝えている訳です。こうなると、プレイヤーがソフトと感情面で対話するので、面白さが出てきます。 ここまで出来て、最低限の「ゲーム」です。

これをプログラミングすると、モグラの状態として「やられ」が追加され、その画像を作り、そして、その時に押されても点数は入らず、また、そのモーションが終わって少し経たないとモグラは出せない、ゲームオーバーの時でもヤラれモーションは最後まで出す、等の制御をする必要があります、意外と面倒と感じる人も居る筈です。

更に、プレイヤーにどう遊んでもらうかによって、例えばもぐらの出現する規則で変えて爽快感を演出するなら、初めは左から順番に出るようにしてどんどん倒して快感を得られるように学習してもらって、その順番でモグラのやられアニメーションが次々再生されると、楽しく感じるでしょう。規則がある出現でその規則が切り替わり、法則を見つけられると点数が高い、ある程度のスコアや、連続ヒット数でどでかいハンマーを出すと、全部を倒せるけど、そこまで頑張る必要がある、等の戦略を作り出していきます。

翻ってジャムで作られる作品は、そうした作り込みまで達しづらいです。何故かと言うと、
  1. 時間制限が短いので、完成まで漕ぎ着けるのが目標となり、先ずは仕様通りに作ることに執心し、そこが完成になりがち。
  2. 上記の様な演出部分に対する必要性が、プレイヤーによるフィードバックが少ないために気づきにくい
  3. 演出面を作ろうとすると、作業量が非常に多い
    (上記のモグラのやられアニメなら全体の30%くらい?見直すのは全部になる)
ということになり、作りこみと時間の戦いで難しい判断を求められます。そして、楽しく作ろうと思ってやっていると、その辺の部分が作業量が急に追加された感じがしてやる気が削がれる、ということもあります。

ゲームジャムの目的が「面白いゲームを作る」というジャッジがなされるまで実施されていないので、出来た作品の評価はあまり看過しないイベントとしては成功、と言えます。そういう意味で、「短時間で作られたゲーム」、と思った次第です。

ゲームデベロッパが参加しないことの理由

このイベントに、どうしてゲーム開発をしている現役の人達が参加しないのだろう?と思う方々もいらっしゃるようです、そうした人達ならもっと凄いのを作れるからです。でも、それはあまり期待できないと思ってます。何故なら、
  1. 仕事で制作すればお金になるのに、無料でやる価値が見いだせない
  2. 作られたものの権利はどうなるのか判りにくいし、他人に譲渡したくない
  3. 短期間のプロトタイピングならイベントでやる必要が無い
こんなところでしょうか。例えば料理人が知り合いから「今度、ホームパーティーするんでタダで料理作ってよ」と言われて、快諾する人はあまり居ないと思います。「今回はダタですけど、お気に召した方は有料で承ります」 という宣伝でいくなら、未だ少しやる気になるでしょうか。でも、「この前の料理おいしかったから、君から頼んだことでタダで出来ないかな?」と、虫のいい知人も現れる事でしょう、もう面倒なので嫌になります。ていうのを、これを見て思い出しました。

これから先もデベロッパに在籍するクリエイターが来ることは少ないでしょう、参加にメリットが見いだせない限り。出来た作品はデベロッパでも見てると思いますが、これに2日は対価として見合わない、企画段階で没になる、と思っている可能性があります、そこは目標が違うから仕方がないです、「作ってみよう」と「ビジネスとして売る」ことは、根本的に違います。上記の作り込みまでを完成として考えて企画し、面白味が明確化し、マーケットの予想をしたところからコーディングでプロトタイプを作るのが、実際のデベロッパだと思います。

 「アイデアをここから得てビジネスに繋げよう」という目的で来ることはないのか?と思われる方もいるかもしれませんが、実際にゲームにしていないアイデア出しは、ほとんどのゲーム開発企業でやっています。新規性が見られるアイデアでもビジネスになるのかは別で、「発想は新しいけどお金にならないからやらない」というアイデアは多いです。また、無料で遊べるゲームがかなりの作り込みがなされている現在、売り物になるまで作りこむコストを評価するとどうなのか考えると食指が動くものではない、というのが本音では無いでしょうか。あり得るとすれば、そこで人材を発掘したい、という部分です。新卒者のコミュニケーション能力を見るには、良いイベントです。

出来たものから参加者がビジネスに繋げるのは難しいが

デベロッパが食指を動かさないなら、参加者で制作を継続してビジネスに繋げる、という方法論は別に検討できます。参加していない私には想像になりますが、疲れるから嫌になると思います。その限定された期間で作業する事で、どこまで作るか仕様を絞っていたり、あとxx時間は頑張れると思って出来る努力を、ビジネスとして成立するまでの作り込みする余裕は少ないと思います。本業が別にある人達ですから、ビジネスにならない事に時間を割くのは難しいでしょう。製品にするには、実際のデベロッパがフルタイムで数ヶ月間を要したソフトに対抗する必要があります、それにはやはり大きな人的リソースの投入が絶対的に必要です。片手間で出来るかというと、容易ではありません。そこを突き抜けられる人が成功する可能性も秘めていますが、仕事をやめてこれに没頭しようと決断出来る人は、なかないか居ないと思います。

考えられる事は、その成果物をデベロッパに買い取ってもらうことです。作業量として見積もるとかなり安いと思いますけど、そこから製品化まで漕ぎ着けるところをデベロッパに委ねて、自分の名前が「原案 xxxx」とかスタッフとしてクレジットされるだけでも楽しいのでは無いでしょうか。 製品化まで作ったらデベロッパが買い取る、という方策もありますが、そこは難しいでしょう。ハッカソンはそうした流れで出来ているイベントもあるので、ゲームも開催母体がゲームパブリッシャ、となれば変わる可能性があります。


ゲーム好きにもレベルがある




http://www.sugawara.ac.jp/digital/game/

これはうちの学校のパンフやHPに載せてる図です。ジャム参加者は上記Lv3に相当すると思います、デベロッパはLv5です、そこには差があります。他方、作るのが好きすぎてきれいなコード書いてうっとり出来る人も、デベロッパには向いていると言えますので、上記が一元的では無いと思って下さい。



色々ととりとめなく書きましたが、デベロッパを目指す、本校のような学生がジャムに参加するメリットは、
  1. 完成までの工程を見渡したスケジュール管理の必要性を、理解出来る
  2. ゲームデザイン・プログラム・グラフィックで何をするのか垣間見れる
  3. 貢献度で自分の能力を計ることができる
  4. コミュニケーション能力が鍛えられる
  5. 知らなかった人とコミュニティを形成し制作に役立てられる
    (出来ないことをしてもらい協調作業が出来る)
というところです。自分もほぼ初めて、後輩と話が出来ました。これは良い事です。
メリットをしっかり見据えた上で、これからもどんどん、参加して欲しいと思います。